2026.03.08
これからの人事制度の方向性(前編) ~「選ばれる企業」になるために・採用市場の現実編 ~
前回までのコラムでは、働く人の価値観が大きく変わり、その変化に制度が追いつかないことで“見えないズレ”が生まれ、採用・定着・組織運営、さらには事業競争力にも影響することを整理しました。
では、企業、特に中小企業がこれから時代に合った制度を整えるために、どのような方向性を持てばよいのでしょうか。
今回は、その「制度づくりの入口」となるポイントを、前編・後編に分けて記載していきたいと思います。
■ 若手の就職先基準は「新3K(給与・休日・希望)」へ
国土交通省が建設業のイメージ改善に向けて掲げた
「新3K(給与・休暇・希望)」 は、建設業を契機に広まった概念ですが、
現代の若手の企業選びの傾向に非常にマッチしています。
各種調査でも、
企業選び基準1位は「給与(30.7%)」(新社会人調査)
「生活と仕事の両立」「働きやすい環境」も上位(マイナビ)
といった結果が出ており、
給与・休日・希望(働きがい)が若手の意思決定の中心になっていると言えます。
■ “年間休日120日以上”が求職者の検索条件に
リクナビ・マイナビ・dodaなど主要サイトでは、
「年間休日120日以上」 が検索条件として標準採用されています。
上述のように休日に関心の高い求職者はまずこの条件で求人を絞り込むため、
年間休日120日未満の企業はそもそも検索結果に表示されず、検討のテーブルにすら乗らないという状況が実際に起こっています。
もちろん、業種上すぐに休日を増やすのが難しい企業もありますが、
採用市場の入口条件が変化している
という事実は、経営判断上押さえておく必要があります。
■ 「休日を増やすと売上が落ちるのでは?」という不安
中小企業の経営者から、よく聞かれる声が、
「休日を増やしたら売上に影響しそうで踏み切れない」というものです。
ただし、
休日を増やす=会社全体を休みにする
という必要はありません。
実務的には、次のような運用が可能です。
・ “複数の会社カレンダー”をつくる
会社全体で一斉に休むのではなく、「Aチーム」「Bチーム」のようにチームごとに休日をずらして設定する方法です。
これによって、
会社の稼働日数は維持しつつ、社員一人当たりの年間休日だけ調整して増やす
という両立が可能になります。
シフト制に限らず、
事務職・管理部門でも役割分担次第で十分成立します。
■ 給与は避けて通れない競争軸
物価上昇とともに市場全体の給与水準も上昇しており、
若手・ミドル層は
「自分の給与は市場相場と比べて適正か」
という視点を強めています。
そのため企業としても、
・ 月額給与だけでなく「総報酬(賞与・手当・福利厚生など)」として考える
・ 同業他社との水準比較
・ 物価上昇とのバランス
などを踏まえた “市場に適応した報酬設計” が求められています。
貴社の報酬水準が市場から大きく外れてしまうと、
・ 求職者に選ばれない
・ 既存社員が転職を検討し始める
・ 優秀な人材から離れていく
という大きなリスクに直結します。
後編では、
柔軟な働き方・評価制度・育成・人的資本経営という点から、深掘りしていきます。