2026.07.19
国際的な潮流・変化への対応
~懲戒制度における「減給」の在り方~
近年、サステナビリティ意識の高まりから、企業経営においても「人権」という言葉を目にする機会が増えてきました。
従来、人権への対応というと、どちらかといえば行政や大企業の取り組みとして捉えられることが多かったように思います。しかし近年は、サプライチェーン全体を通じて企業に求められる要素となり、その影響は中小企業にも広がりつつあります。国際的な企業活動の中では、人権への配慮が企業評価の一つの基準として位置付けられるようになっています。
そのような中、就業規則の見直しにおいて注目されるテーマの一つが、懲戒制度における「減給」です。
日本では、労働基準法第91条によって一定の範囲で減給処分が認められており、多くの企業で懲戒処分の一つとして位置付けられてきました。
多くの企業では、けん責から減給、出勤停止、降職・降格、諭旨解雇、懲戒解雇へと続く段階的な懲戒体系を保有してきています。
一方で近年、国際的な人権尊重の考え方を背景として、減給処分を見直す企業が増えています。特に、RBA(Responsible Business Alliance)の行動規範では、懲戒処分としての賃金控除を認めない考え方が示されており、加盟企業やそのサプライチェーンに属する企業にも影響を与えています。
この動きは「法律に違反しているから見直す」という話ではない点を注視する必要があります。
日本の法制度の中では認められている制度であっても、国際的な企業活動や人権への配慮という観点からは、別の評価がなされるようになっています。
つまり、
「法律上認められていること」
と
「社会や取引先から求められること」
が、必ずしも一致しなくなってきているのです。
減給制度を見直す場合には、
企業としては、組織の規律を維持しながら、従業員に適切な指導を行う必要があります。そのため、減給制度を見直す場合には、けん責や出勤停止、教育・指導のあり方なども含めて、懲戒制度全体のバランスを考える必要があります。
これまで当たり前と考えられてきた制度であっても、社会や取引環境の変化によって見直しが求められることがあります。
「減給」に関する議論は、その一例と言えるのかもしれません。
制度そのものの適法性だけではなく、その背景にある考え方や価値観にも目を向けること。
そうした視点が、これからの労務管理や就業規則の整備において、ますます重要になっていくように感じます。