Column

2026.07.05

「制度は正しくても」

「制度は正しくても」

これまで、政策の流れ、運用の難しさ、そして現場での迷いについて見てきました。
今回はその延長として、「制度そのもの」と現場との関係について考えてみたいと思います。

制度やルールは、一定の前提のもとに整備されています。
多くのケースを想定し、可能な限り公平に、合理的に設計されているものです。
その意味で、制度が「間違っている」ということは、それほど多くはありません。

それにもかかわらず、現場ではうまく機能しないと感じられる場面があります。

一つの要因として考えられるのは、
制度が前提としている状況と、実際の現場の状況との間に、少しずつズレが生じていることです。

働き方や組織のあり方が大きく変化する中で、
制度が想定していた典型的なケースに当てはまらない状況が増えてきています。
その結果として、「制度としては正しいが、現場にはうまくなじまない」という感覚が生まれやすくなっています。

また、制度は本来、一定の幅を持って運用されることを想定していますが、
実務の現場では、その幅をどう扱うかが次第に難しくなっています。

幅を狭くすれば統一感は保たれますが、柔軟性は失われます。
一方で、幅を持たせすぎると、判断のばらつきや不公平感が生じやすくなり、制度そのものが形骸化してしまうおそれもあります。

このバランスをどの程度で取るのかは、制度そのものではなく、
運用や現場の判断に委ねられている部分が大きくなっています。

さらに、制度の本来の意図が現場に十分に共有されていない場合、
形式的には適切に運用されているように見えても、
結果として制度が想定していた目的とは異なる方向に進んでしまうこともあります。

制度は「守るもの」であると同時に、「活かすもの」でもあります。
しかし実際には、守ることが意識されるあまり、
活かすという視点が後回しになってしまうことも少なくありません。

こうした中で、「制度としては正しいのに、うまくいかない」という状態が生まれているのだとすると、
問題は制度そのものではなく、
制度と現場の間にある“距離”の取り方にあるのかもしれません。

制度を前提として現場に無理に合わせるのか。
あるいは、現場の実情を踏まえて制度の活かし方を考えるのか。

その選択のしかたによって、同じ制度であっても、
見え方や機能の仕方は大きく変わってきます。

これまでの内容を通じて見てきたように、
政策、運用、現場、制度はそれぞれ独立しているのではなく、
互いに影響しながら関係しています。

その中で、制度をどのように位置づけ、どのように扱うのか。
その視点が、これからの組織運営において、より重要になっていくのではないかと感じます。

企業の中だけでは、なかなか解決の糸口が見えづらい場合もあります。
そうしたときには、顧問社労士などの専門家の視点を交えながら整理していくことで、
新たな方向性が見えてくることもあるかもしれません。